九州・佐賀県のやきものである唐津焼をルーツとしながら、世界各国を訪れその土地の素材を使い、自由な感性で作陶を続ける中里隆氏。本年で87歳となる現在も精力的に作陶され、日本陶芸界のみならず海外陶芸界においてもやきものの価値とその魅力を広く伝えています。中里氏は唐津の名門陶家・中里太郎右衛門窯十二代目当主(号:無庵、1895〜1985)の五男として生まれました。青年期に京都や唐津で作陶した後、種子島に渡り島の土による種子島焼を手がけ、帰郷後に「隆太窯」を築窯。唐津を拠点に国内外を旅をし、陶芸の技によって人との交流を深め、出会いや学びを楽しみながら創作を行ってきました。海外の土や釉など、現地の素材を活かしながらも、空間を飾り、手で触れ、用いることに喜びを見出してきた日本のやきものの原点である「器」に礎を置く中里氏の作品は、作陶の初期から現在まで半世紀以上にわたって多くの人を魅了してきました。その作品は、いずれも巧みな作陶技術によって生まれる伸び伸びとした形、釉や焼きによる質感など、やきものならではの魅力を湛えています。本展では日常使いの器や酒器花入など、ハワイ・超禅寺や徳島県倚山窯にて制作された作品も出展していただきます。多くの方々に器の魅力を感じて頂ける機会となれば幸いです。どうぞご高覧ください。