工芸は自己表現の時代が長く続いた。
でも、もともと器作りは、
料理をする人がいなければ成立しないもの。
そのように使うひとや、周りの環境とつながる器のことを
あらためて考えてみたいと思った。
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ギャラリーやまほんで続けてきた「ちいさな時間」シリーズ。
大きな物語というつながりを失い、
バラバラに孤立した「個人の時間」のことを、
考えていたのだと思う。
自分の足元にある断片を、拾い集めながら
つぎはぎだらけの物語を、こしらえようとしていたのだ。
そんな僕にとって救いだったのが、器を作ることだった。
器には、いつも誰かと繋がっているという、喜びがあった。
三谷龍二
本展では松本市にて活動する木工作家、三谷龍二の展覧会を開催いたします。
木工界のみならず現代工芸を牽引する三谷はその活動をスタートさせた1981年から約40年という歳月を経る中で、自身の器作りの原点である生活者の視点の重要性を「生活工芸」と言葉に置き換え生活工芸の意義と思想を文章に落とし込み、うつわの制作と同等に大切な活動として考えてきました。本展では「うつわのこれから」と題した造形作品と現在の思考を綴った新作の冊子を発表します。木の器の木肌の良さを感じるのと同じように、三谷の文章の手触りも感じていただけると幸いです。どうぞご覧ください。 店主